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momently, quietly
映像作品『moment』に対して特有のスクリーンを制作し、映像とスクリーンの相互的な作用によって生まれる表現を探った。
『moment』がその素材ゆえに持っていた透明性を、アルミ板の金属がもつ質感に担わせるスクリーンを制作した。当然のことながら、スクリーンに映像を当てるにはプロジェクターが必要で ある。このプロジェクターの光は、モニターが自ら発光するのとは異なり、周囲に吸い込まれていく感覚が自分にはあった。放たれた光は空気へと融け漂い、結像した時にはどこかはっ きりしないように思われた。映像の透明感に質量を持たせる上でそのような光を定着させるべく、いわば感光板となるようなスクリーンが必要であった。 そこでアルミ板の光の反射を利用し、さらに板を研磨することで乱反射を起こし、明らさまなプロジェクターの光源が気にならずかつ明確な像を得ることに成功した。研磨に際しては投影される映像を考慮し、いわゆる地面と空とで削る方向を変え、両者の関係性を際立たせることを試みた。途中現れる ” 山 ” の付近は双方の削り方を取り入れて、中間的な表現となるようにした。研磨の過程で、薄く表面につや消しのアクリルをのせることにより、さらなる定着を目指した。
一見変わりのない光景がそこに存在しているが実際には刻々と変化を続け、その時間の軌跡/幅がスクリーンに刻まれている。 プロジェクターの光が投影された金属板は発明当初の写真の様相を彷彿とさせながらも、油彩の筆致のようなマチエールや水墨画のような陰影を帯び、ときにレリーフであるかのような錯覚を生じさせている。映像という平面と物質の持つ量感とを往来する作品となった。
2016年度武蔵野美術大学 真夏のオープンキャンパス展示作品
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