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The Universe

透明素材の、” 外 ” と ” 内 ” (或いは ” 表 ” と ” 裏 ”) の関係を使った表現ができないか考えていた。その中でとある素材は最適なモチーフに思われた。内が見えつつ、ライティングが当たるのは主に外側のみ。そうした複雑な光の反射は私を虜にした。ときに硬質な金属のような光さえ感じさせるのを見て、中の様子が見て取れる何かしらの構造物を作れると直感した。だが制作を続ける中で、そこに生物的な要素をも感じ始めていた。 生物もある構造物という点では、建築物といっても過言ではない。中身から表層、機能まで全てペットボトルから生み出された ” 彼ら ” は、映像の黒という無限の空間に漂い始める。 マシンのような人工物がいつの間にか生物に見えてくる。それらはまさに変態を行いながら成長し、個体として死に、次の世代を残すことで種として生き続ける姿に他ならない。そうした生命の営みがループし、永遠に続いていく。彼らは果たして宇宙を漂っているのか、深海に漂っているのか、はたまたシャーレというミクロの世界を生きているのか。見る人によっ てさまざまな印象を与える。

 

この作品で表現したかったことは、光の変化に端を発する。普段身近に使いながらも捨てられる運命にあるモチーフが、こんなにも光り輝くことができる。その驚きを他者にも気づいてもらいたいという単純な動機がそこにはあった。それを伝える器として、生命のライフサイクルという物語が機能していたのである。 ただし、それが単なる機能としてのみ必要だったわけではなく、永遠に対する憧憬があることも事実である。人工物的な生命の形を持った ” 彼ら ” がただひたすらに漂い続け存在し続けること。個体のみのときと群れになるとき。人間も含め、あらゆる命が必ず終わりと始まりが表裏一体であり、” 生命(生物)” という抽象的な概念にたどり着けるか。それをループ構造の中に表そうとしたのであった。光り輝く命が、人知れず世界に漂っている。

2016/10 武蔵野美術大学映像学科進級制作展 展示作品

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