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遠く、ながれて、ずっと
石は古くから人となじみのある物質である。やじりや火起こし、石室などさまざまな用途に用いられてきた。しかし、石そのものが経験してきたであろう時間に思いを馳せることはほとんどない。地球内部より吹き出た溶岩から今の姿に至るまで、何億年という昔から雨風にさらされて転がり続けてきたことだろう。そんな石の時間に触れることで、コンクリートに覆われた今日に再び大地への想像を抱きながら、密度を持った世界観への没入を試みた。
映像に現れる石はディテールを保持しつつも、ただ硬質な存在としては登場しない。むしろ、常に画面の全体性を維持したまま表情を変えつづける、透明性を帯びた流体としてその存在を表わしている。水と時間の流れは比喩に用いられるように親和性が高く、その透明性は画面への没入のきっかけに寄与している。また没入に供する密度を高めるためにはシンメトリー性や中心性を排除する必要があり、その点はロスコやポロックといった抽象表現主義の画家たちに学んでいる。
2018/1 2017年度武蔵野美術大学卒業制作 出展作品
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