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遠くを望む

映像の誕生から 120 年を経た現在、技術革新は進み続けている。一方でその展開、提示の仕方には限界が見えているようにも感じる。そうした今日に映像というメディアの性質・問題を再考することで次なる表現は可能なのか、という意図のもと自らが企画した展示に向けて制作した。

本作は、映像(ビデオ)の特性である ” 記録 ”、” 再生 ”、” ライブ性 ” を同時に扱う表現は可能か、という点から出発した。それらを同質に等しく扱って成立させためにはどんな構成が可能か考えた。結果、それぞれの要素を1つの画面に収め、映像が自己完結する形となることにした。そのためにはモニターとプロジェクターを用いる必要があり、両者をつなぐ要素として、ビデオフィードバックの可能性があった。使い古された手法ではあるが、 映像のライブ性を担うにあたり重要な役割となった。

そしてその内容を考える上で、” 光 ” を主役に考えることにした。出力機器としての映像を構成する最小単位 が ” 光 ” だとするなら、内容としての時間軸以上にデバイスにおける光に着目した表現がありえると考えた。映像である以上時間軸からは逃れられないが、ナラティブとの親和性の中で映画やドラマが映像にとっての主軸となったのであり、時間軸が絶対的に重視される制度だとは限らい。そのため周期的な運動を繰り返す線を配置することで時間軸の流れを実質的に排する構造の映像を制作した。またビデオフィードバックの効果が現れるよう、 映像の画面は半分のみ制作し、残り半分はプロジェクターが映し出す光景となるようにした。線は単純な線にならぬよう、実写映像を背後におくことでより複雑なニュアンスを持った線になるようにしている。 結果、モニターとプロジェクターの両者の光が重なるところ、プロジェクターの光源の反射を中心として、線の運動に伴い炎のようなフィードバック現象が画面に揺らめいた。

2017/6 『映像は死んだのか』展(武蔵野美術大学課外センター) 展示作品

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