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The Pasts in the Future

液晶ディスプレイとプロジェクターによるビデオフィードバック現象を用いたシリーズの第2作。

本作では大きいモニターを使用することでプロジェクターの投影距離を確保した。 またモニターを垂直方向の壁掛けから水平方向の平置きに設置することで、人があいだに入り自らの手や腕がモニター(スクリーン)上に投影されることが容易になるようにした。そして、観客の向きを固定せずあらゆる方向から見手がモニターに近づけるよう、映像の内容も中心を軸として回転するものに再編集した(画面の半分が余白であることは前作と同じ)。 このことは、ビデオフィードバックによる増幅の効果をより顕著に示すことにも寄与している。その中で複雑化していく線が映像に厚みを与えるように見せていく。 さらに赤い点を画面全体に配し、明滅しながら線の下を移動することで、映像に深さがあるようにを錯覚させ、より人々が手を伸ばしたくなるように仕込んだ。その結果、人々がかざした手はあたかも映像に取り込まれ、映像の中に入り込んだかのような体験をすることになる。ここで、本作のライブ性は映像の自己完結に止まらず、周囲の観客をも巻き込みさらに大きなライブ性(≒観客と作品のフィードバックによって生まれる作品)を持つこととなった。

本作の場合、観客とのインタラクティブな要素がなくとも作品として成立しており、そこに観客が入り込む余裕があることにより映像と現実の境が曖昧となる。従来の映像が 人々にある特定の態度を固定してきたのに対し、本作は人々が比較的自由に反応を示せる作品であるともいえる。その一つ昔の自由な行動によって、眼前に現れる光の渦の様相も刻々と変容を続けていく。掴めそうで掴めない次元に輝きつづける光はまだ見ぬ未来への憧憬でもあり、また確実に過去の重なりによって生み出されたものである。

2017/8 武蔵野美術大学 真夏のオープンキャンパス 展示作品

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